神経系の発達(お子様のために)小児神経学クリニックの案内

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小児神経学クリニックの本院における診療

※お断り 本稿は一般の方向けに執筆したつもりですが、用語など難しいかもしれません。今後改善していく予定です。

 小児の神経の病気は、成人と同様に脳から脊髄、手足の神経、筋肉の病気があります。しかし、神経系が発達の過程にあるため、その神経系が未発達の段階では、そこに病変があっても症状が出現しません。手足の神経、筋肉、また、脊髄は、早くからあるレベル以上に発達していきますから、乳児期からはっきりした症状を出しますが、脳の異常、とくにその高次機能の発達障害では、その症状の発現は遅れます。

 例えば、自閉症は国際診断基準では3歳で診断するようになっていますが、これはすべての症状が出そろい、誰もが正しく診断できる段階です。したがって、他の病気に例えれば、腹部をさわり、腫瘍に触れてはじめて胃がんと診断することに等しく、手遅れと言えます。自閉症の専門家は、乳児期で診断できます。それは脳の発達に関与するセロトニン、ドパミン神経系の異常を睡眠・覚醒リズム、はいはいの発達の遅れで判定、また、筋緊張の微細な異常をとらえることで可能です。

 これは、他の発達性神経・精神疾患にもあてはまり、それぞれが睡眠・覚醒リズム、はいはい、歩行の発達の特定の時期に異常があり、それをみることが早期の診断につながります。また、症状が出そろい、診断が明らかになった段階でもこれらの徴候をとらえることにより、病気の原因、仕組みが明らかになり、原因に対する的確な治療が可能になります。

 私どもはこれにより自閉症、レット症候群、トゥレット症候群の病態を解明、また、ダウン症の精神・知能障害に脳幹アミン系神経系の関与を明らかにしました。これにより、これらの疾患の病態を解明し、自閉症は乳児期に睡眠・覚醒リズム、はいはいの異常で見出し、それを2歳前に加療すれば、発症を阻止する可能性、レット症候群は、はいはい、歩行の訓練をすれば、ドパミン活性異常は防止できる可能性、ダウン症は乳児期から睡眠・覚醒リズム、はいはい、歩行の訓練をすれば、専門学校に入るレベルにすることができる場合もあります。また、トゥレット症候群は幼児期後半から学童期前半(10歳まで)に完全な昼夜のリズムに合った睡眠・覚醒リズムと直立二足歩行を訓練し、さらに、日中の活動レベルを充実させれば、強迫神経症の併発なく、その潜在的に持つ高い知的レベルを存分に発揮することも可能であることを明らかにしました。

 小児の神経疾患は、脳の発達過程に発病することから、個々の神経系の発達をチェックして、すべての神経系の異常の有無をみる必要があります。そのためには、まず、先に挙げた疾患ばかりでなく、すべての疾患について神経系の発達に重要な役割を持つアミン系神経系の発達の良否をみるため、睡眠・覚醒リズム、ロコモーションの発達を詳細に聴取し、また、診療にあたっては頭から足の先まで神経系の関与する異常の有無を検査します。特に知能発達に異常のある1歳前のお子さんでは発達異常の有無、眼球運動、筋緊張の低下あるいは亢進の有無およびそのパターン、左右差のチェック、姿勢反射、立て直し反射の良否、さらに病変部位の特定のため腱反射、筋力の良否、筋萎縮の有無、感覚異常、発声、嚥下の良否などを診察します。また、1歳6カ月以上のお子さんでは利き手のチェックを含め、大脳左右機能分化ができているか否かを、また、大脳の部位別機能分化ができているか否かをチェックする必要があります。さらに、乳・幼児期、とくに乳児期では原始反射の消失の過程、姿勢反射出現の過程、乳・幼児期の異常行動の発現の有無および運動機能、社会性、言語の発達を月・年齢ごとにチェックする必要があります。

 異常所見が見出された場合は、種々の治療によるその変化(改善)の有無をみるため、1〜3カ月ごとにこれらの検査を施行する必要があります。

 小児期に発症する神経疾患、とくに自閉症など脳の発達障害に起因する発達性神経・精神疾患は、診断はついてもその病態、発症の仕組みはいまだ完全には明らかにされておりません。したがって、その治療にあたっては病態を明らかにする必要があり、そこに研究的要素が入ります。

 私どものクリニックが「神経科」ではなく、「神経学」としたことはそのためです。研究的な診療で得た結論は、独りよがりとなってはならないため、そこで得られた知見、結果は必ず学会で発表、また、論文に書き、国の内外の研究者、臨床家の批判を受ける必要があります。

 幸いにして先に挙げた自閉症、レット症候群、ダウン症、トゥレット症候群に関する私どもの理論は国際的にも受け入れられており、自信をもって診療にあたっておりますが、今なお病態は完全には解明されておらず、患者さんお一人お一人から得た診療所見をきちんとまとめることが必要となります。したがって、私どもは新患、再来共出来るだけ十分な時間をとって診察し、ここで得た新しい知見を学会で発表し、他の専門家の批判を受けることにしております。

 私どもは神経系の発達過程、生まれてから(実際は胎児期も含まれます)成人に達するまでに発病した脳、脊髄、末梢神経、筋肉の病気、さらに本来は小児期に発病するべき病気でありながら何らかの理由で成人になり発病した病気の診断、原因究明、治療も目的としております。

 病気を正しくかつ早期に診断することが大切です。しかし、発達過程に発症した疾患にはその病態(病気発症の仕組み)が解明されていない病気が数多く含まれます。専門書の診断基準に従い病名を付したとしても、それは病気が完成した時点であり、診断のついた時点では手遅れとなっている疾患が少なからずあります。これが現在の小児神経学の現状です。

 私どものクリニックが小児神経科ではなく小児神経学としているのは、このレベルを越え、真の病態を明らかにし、それに対する治療を従来の治療法に加えて行うとともに、それら疾患の超早期症状を明らかにし、これが広く普及され、難病を難病でなくすることを目的としたからです。少なくとも7割がコントロール可能となった時、小児神経科とすると考えました。

 小児神経学クリニックは、昭和48年(1973年)11月開設以来36年が過ぎました。この間エルドパ(l-Dopa)で症状が完全に治るドパ反応性ジストニア(瀬川病)の病態はほぼ解明、また、これを基にして、他のドパ反応性ジストニア、ドーパが効かないジストニアの病態の解明がすすみ適確な治療法を確立することができました。

 また、小児期に発病する精神神経疾患、自閉症、レット症候群、トゥレット症候群の病態解明も進みました。その結果、自閉症は1歳半、遅くとも2歳までに睡眠・覚醒リズム、はいはい、歩行を十分に訓練すれば病状の軽減、発症阻止も可能であること、レット症候群では乳児期後半から睡眠・覚醒リズムとはいはい歩行を訓練すれば、1歳以後に認められる病状の進行、精神知能の停滞、悪化を阻止できることを確信しました。

 またトゥレット症候群では10歳以前、とくに幼稚園年長組の年齢から10歳までの間、昼夜の明暗の区別に一致した生活リズムと、背すじを伸ばし、膝があがり、手がふれる歩行を確立することにより慢性化する複雑チックと強迫神経症の併発を阻止し、本来トゥレット症候群の患者さんの持つ優れた才能を生かし、世の中に貢献することが可能になることを示しております。

 私どものクリニックにはこれらの疾患を持つ患者さんが数多く来られており、とくに当クリニックに通院されている瀬川病、レット症候群、トゥレット症候群の患者さんの数は一施設としてはトップクラスであります。そのため、これらの病気の詳しい臨床神経学的検査、神経生理学的検査、それに基づく治療の効果の長期の経過観察が可能になり、また発病後、様々な経過年数を持った方、また、数々の治療をうけた後に来院された方々に対するこれら検査所見を、病初期に無治療で来院された方との検査所見を合わせ考察することにより病態を明らかにすることができたと言えます。

 さらに小児期に発症する重症筋無力症も、本邦で最も多くの患者さんを治療させていただいており、その病態及び治療法は私どもの指針が基になり作られております。

 また、私どもは以前より神経系の発達に注目、とくに脳の発達に重要な役割を持つ、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン等アミン系神経系の発達過程を直接表す睡眠要素、はいはいと歩行パターン及び筋緊張の月・年齢による推移に注目し、診察で得た結果と基礎医学的研究で得られた文献上の事実を対比させ、これらの神経系が生まれてからいかなる神経系を特定の月・年齢で発達させるかをほぼ明らかにしました。

 上に記した疾患以外にも、脳の病気ではてんかん、精神神経発達障害、広汎性発達障害、大脳基底核、小脳の異常による異常運動疾患、すなわちムズムズ足症候群、舞踏病、ミオクローヌス、振戦、パーキンソニズム、失調など、また染色体異常としてダウン症、プラダー・ウィリー症候群など、さらに種々の出生時障害、感染症、外傷後遺症、その他胎生期に生じた異常に対しても、それが発現した時期、その障害部位が発現過程に持つ役割、その障害部位の発達に関与する神経系を配慮し、病態を解明し、主病変に対する治療に加え、その神経系の発達に関与するアミン系神経系の発達を強化する治療を行っております。これによりダウン症、プラダー・ウィリーの患者さんの知能の発達を促し、また、前頭葉てんかんの予後を良好にしております。

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